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一枚のモノクローム写真がある。
元慰安婦だったおばあさんの写真。顔に深く刻まれた幾筋ものシワ。
それはおばあさんがこれまで生きてこられた人生路を表している。
韓国の写真家 安世鴻がこの世に問いかけてきた写真集「重重」の表紙に私は目を奪われた。ページを繰るのが怖いような衝撃をぶつけてきたからだ。
現中国の各地に今もひっそり生きている元慰安婦のおばあさんたちはこのまま死んでたまるかと問いかけてもいるようだ。
韓国本土、アメリカとこれから世界各地に建立されるであろう少女の慰安婦像にあたふたと”遺憾でごさる””もはや政治決着はついていて当国は無関係”と云い続ける我が国のおエライさん達のツルツルした顔とおばあさんたちの顔を見比べるがいい。
凛とした少女たちがあの深い溝を顔に刻み込んでいった70年という歳月は取り返すことはできない。
20年前、私たちは若き慰安婦たちにさぬきうどんを食べさす舞台を創った。あの少女たちの70年後を舞台に乗せることに最後の闘いを挑むべきではないのか。
一冊の写真集に私ははげしい焦燥感をい抱き始めている。
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